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【anySTUDY2 】なぜ次世代育成、さらには自分軸なのか

更新日:2023年2月1日

【anyレポート】第二弾は、「なぜ次世代育成、さらには自分軸か世界情勢に見る「人的資本」と「any」」をテーマに執筆します。当内容に関するディスカッション勉強会「anySTUDY」は12/17(土)14:00~15:30に開催します。


 2017年に『不安な個人、立ちすくむ国家』が発表された。このレポートは、日本国民が抱える数々の問題が、もはや無視できないフェーズに入っていることのランドマークとも捉えられる。すべての日本国民に関係している少子高齢化や次世代人材の無力感などの課題は、すべての日本企業にとっても重要である。このような、もはや無視できない社会課題に企業はどのように向き合えばいいのだろうか?課題から生み出されるイノベーション、課題に関連するステークホルダーへの配慮、そして社会課題の解決をどのように実現すればいいのだろうか?多様性の確保か?あるいは、合理的な経営戦略か?力強いリーダーシップか?

 このような問題に対する本質的解決策は、往々にして目に見えた、明らかに合理的なものではない。むしろ、簡単に目には見えず、一見すると非合理性を持つものである[i]我々はそんな本質的解決策が、次世代人材と自分軸にあると考えている。以下では、図で説明されている事柄を説明し、なぜ次世代人材と自分軸に着目することがイノベーションやあらゆるステークホルダーへの考慮、社会課題の解決に貢献することに繋がるのかを示す。


1.目を付けるべき「本質的ステークホルダー」

“格差拡大や気候変動問題、パンデミックなど、世界が危機に直面するいま、社会や地域環境の持続的な可能性に向けて、企業は株主のみならず、従業員、顧客、取引先、コミュニティなどすべてのステークホルダーを戦略の中心に据えなければならない。パーパス主導の経営こそが、長期的な企業価値を実現し、新たな未来をつくることにつながる。”

-『ステークホルダー資本主義』(Diamond Harvard Business Review 2021年10月号)


1.1ステークホルダー資本主義

 我々は、どのような企業にとっても、次世代人材が最も本質的なステークホルダーだと考えている。それは、なぜだろうか?それを考えるにはまず、ステークホルダー資本主義などの背景の考えを改めて考える必要がある。

 どのような企業であっても「関係のない課題」や「関係のないステークホルダー」は存在しない。どのステークホルダーとの関係性が、企業にとってのリスク要因となるかが不確実だからであり、あらゆる課題やステークホルダーに企業の存続を脅かす危機が生じ得るためである。このリスクマネジメントの観点に加え、従来の事業領域外の課題やステークホルダーに目を向けることは、新しい取り組みを生み出し、新しいケイパビリティを生み出し、さらにはイノベーションを生み出す。[i]このような考えが、ステークホルダー資本主義やパーパスという言葉が流布している背景にはある。

[i] Diamond Harvard Business Review 2021年10月号 & 2022年6月号


1.2本質的なステークホルダー

 しかし、ここで1つ問題が生じる。あらゆるステークホルダーを考慮することは、容易に実現できることではない。どのような個人、集団、組織も認知の限界を抱え、「限定された倫理性」を持っている[i]。つまり、企業があらゆるステークホルダーに、あらゆる時において目を向けることは事実上不可能である。そこで我々は、「限定された倫理性」を克服するためには、「本質的なステークホルダー」に目を向ける必要があると考える。つまり、他のステークホルダーに広く間接的につながっているステークホルダーを特定する必要があるのである。あらゆる課題に関連している本質的ステークホルダーとは誰なのだろうか?我々はそれを「次世代人材」であると考えている。

[i] Bazerman, M. H., & Tenbrunsel, A. E. (2013). 倫理の死角 なぜ人と企業は判断を誤るのか (1 ed.). 品川区: NNT出版株式会社.


2.「次世代人材」の隠れた力

2.1社会課題と次世代人材

 次世代人材を本質的なステークホルダーに据えるのは、次世代人材が社会課題の影響を最も受けるからだけではない。むしろ、次世代人材こそが様々な社会課題を解決するカギだからである。次世代人材が様々な社会課題の解決を担う存在であり、その意図も持っている。そのため、幅広く、多様なステークホルダーに貢献する根幹にある本質的なステークホルダーなのである。つまり、社会課題やそれに関連するステークホルダー個々に着目するのではなく、その解決を担う主体に目を向けているのである

 1990年から2010年までに生まれたZ世代はこれまでの世代と異なる性質を持っている。一橋大名誉教授の伊藤邦雄氏によると、1990年から2010年ころまでに生まれたZ世代は、インターネットやSNSなど普及から世界中の社会課題とリアルタイムで接しており、社会課題に強い関心を持っている人が多い[i]。実際に、「Z世代が考える社会を良くするための社会運動調査2022」によると、15~29歳全体では87%が関心のある社会課題があると答えている[ii]。別の調査によると、コロナ禍以降の大学入学者の78.4%がSDGsを意識した行動に取り組みたいと答えており、これはコロナ禍以前に比べて増加している[iii]

[i] [幸せをつくる。]働く(上)Z世代「社会の役に」2022.9.29 [ii] https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20220410-00288510 [iii] https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM25BAS0V21C21A1000000/?page=2


2.2イノベーションと次世代人材

 また、次世代人材は社会課題を担う存在でもあるが、企業にイノベーションをもたらす存在でもある。「イノベーションは辺境で生まれる」という言葉がある。規範や文化、風土や常識に染まっていない辺境の存在がイノベーションを起こすのである。企業にとって「次世代人材」は辺境の存在になり得る。「無知」が故に、企業文化、既存の社会規範に染まらず、そして押さえつける制約条件にとらわれず大志を抱ける。これは、従来と異なる課題が増えている中ではさらに重要である。全く新しい課題が増えている中では、これまでの延長上にはない思考と活動が必要なのである。

 また、現在の次世代の特徴である社会課題に対する認識も重要である。あらゆる課題は、問題であると同時にその解決策を生み出す源泉である。革新的なイノベーションや新しい取り組みは、新しい課題がなければ生まれない。その意味において、社会課題が多い日本は、イノベーションのチャンスにあふれている。しかし、そのチャンスをつかむには、その課題を「中から」感じて、考えている次世代人材の視点が必要である。

 さらには、この次世代人材の力は他の世代と交流することでさらに有用となる。次世代人材に抱かれる大志は伝播し、他の世代にも影響を及ぼす。例えば、ディープパーパスと呼ばれる大志を抱く人は、周りのパーパスも生き生きとしたものに変えていくとされている[i]。加えて、世代間のコミュニケーションを通じて、新しいアイデアの生成やよりより意思決定の実現が可能となる。実際に、世代の違いを覆い隠すのではなく、違いを認めて活かすことの重要性が説かれており、世代間で相互学習をする相互メンタリングが紹介されている[ii]。他にも、若い世代の「影の取締役」が意思決定プロセスに関わることで、アイデアの選別に寄与している事例もある[iii]

 当然ながら、企業によってどれほど次世代人材が本質的なステークホルダーであるかはグラデーションがある。イノベーションや社会課題とは距離が遠い企業もあるだろう。しかし、CSRが重要なトピックとして取り上げられ[iv]、イノベーションの重要性が叫ばれる中で、競争優位を生み出すには、次世代人材に目を向けることは必要不可欠だろう。


[i] https://dhbr.diamond.jp/articles/-/8703 [ii] Diamond Harvard Business Review 2022年9月号、Gerhardt et al., 2022 [iii] Diamond Harvard Business Review 2022年9月号、Jordan & Khan, 2022 [iv] Agudelo, M. A. (2019). A literature review of the history and evolution of corporate social responsibility. International Journal of Corporate Social Responsibility


3.次世代人材の力を活かせない理由

3.1次世代人材の社会課題の解決への壁:無力感

 しかし、次世代人材の力は全自動で企業に利するわけではない。現在の次世代人材は、社会課題に関心があると同時に、実際に社会課題の解決に取り組んでいるかに関して、「関心はあるが、具体的に取り組んでいることはない」が35%で1位である。このギャップの背景には、若者の無力感、将来への希望のなさがある。つまり、関心はあるが、社会を変えられる希望がないため行動はしないということである。日本財団の世界9カ国の若者への「18歳意識調査」では、日本は「将来、国が良くなる」と考えている人が1割以下にとどまり、「自分の力で国や社会を変えられる」と考える人も2割にとどまった[i]。これは、他国に比べて低い水準である。


3.2次世代人材のイノベーションへの壁:内的な軸の欠如

 次世代人材の力を社会課題の解決に活かす壁が無力感であるならば、次世代人材の力をイノベーションに活かすときの壁は内的な軸の欠如である。現在の次世代人材には、多くの社会課題を前に不安を感じ、時代の潮流に振り回され、行き当たりばったりのキャリアを歩んでいる人も少なくない。やる気のある人はわずか6%であり、入社3年以内の転職者数が増加しキャリア迷子になっている。大学を卒業していても、新入社員の離職率は3割程度であり、特に入社1年に離職する確率が高い[i]。その原因は「思考不足」であり、日本を含む世界各国を調べた調査では、仕事を変える際の最も大きな失敗理由は単純なリサーチ不足である[ii]。また、この調査では他にも転職の失敗をお金のために仕事をやめること、目標を持たずにただ現職から離れるために転職すること、短期的に考えることによって転職の失敗を説明できると述べている。転職に関する研究であるが、同様のことが就職でもいうことができるだろう。

 この問題の根底には何があるのだろうか?人は決断をする際には、何らかの軸に基いて決断している。日本では多くの場合、自分の内部から生じる軸ではなく、外部に与えられた軸に基いて決断が行われている。つまり、「こうあるべき」という外的な軸が採用されている。就活においては、社会規範としてどのようなキャリアが望ましいか、何が期待されているか、周りは何を行っていて何がいいと考えているのかを基準に選択していることが多い。日本では、日本人の周囲への同調を重視する国民性に加え、自分軸を包み隠さず言葉にする場が少ないことが、外的な軸が支配的になってしまう原因の1つである。これは、短期的には問題がないようにも思われるが、長期的には問題が生じる。外部の環境変化に左右され、場当たり的な対応に振り回され、キャリア迷子に陥ってしまうのである。なぜなら、外的な軸は環境変化によって急速に変化するからである。また、目に見える明らかで、顕著性が高い外的な軸に飛びついてしまうため、リサーチや思考が不足してしまうのである。

 これでは、たとえ「辺境の存在」としての次世代人材がいたとしても、その力を発揮してもらうことは難しい。企業にもマッチせず、モチベーションもなく、後ろ向きな理由で離職を繰り返す人材が、企業にその創造性をフルに提供するとは考えにくいのである。そこでanyはこれらの問題を解決する仕掛けとなる。社会課題の解決への壁、イノベーションへの壁を突破するためにanyは「自分軸」に着目するのである



4.次世代人材の力を活かすために必要な自分軸

 無力感による社会課題への取り組みの欠如、内的な軸の欠如によるキャリアの問題は「自分軸」を明確化することで解決できる。自分軸の概念定義では2つのことを考える必要がある。1つは、どのような概念から構成されているかである。2つ目は、それらの概念の適切な在り方を示す基準である。この適切な在り方を示す基準が自分軸では本質的であり、多くの場合見落とされ、外的な基準に置き換えられているものである。

 まず、自分軸はどのような概念から構成されているのだろうか?まず、「未来」に対してどのような目標を持っているのか、自分がどうなりたいかが重要である。しかし、それだけでは終わらない。自分軸においては、「現在」自分がどうありたいか、どのような行動をとりたいかも重要である。

 そして、これらの最適なありかたの基準が自分軸の重要なポイントである。まず、現状としては多くの個人は上の諸概念にバラバラの基準を当てはめている。未来に対しては外的な基準を当てはめていることが多い。社会的ステータスや、社会的に評価されていること、トレンドになっていることである。これは他人と同じになること、承認されることなどを正しいことの基準にするということである[i]。その一方で、自分がどうありたいかに関しては、人間の根本的な欲求に従っていることが多い。楽したい、幸せになりたい、楽しみたいなどである。これは手短な報酬を重視する人間の傾向によるものである[ii]。この基準の乖離によって、目標に反する自分行動に失望し、自己肯定感が低下することが往々にしてある。では、ここに一貫性を持たせるにはどうすればいいのだろうか?それは「自分が何者であるか」であり、もっといえば「好き嫌い」である。好き嫌いを明確に言葉にし、捉えること現在と未来に一貫した軸を作ることができる。さらに、これはなかなか変わらない軸であり、10年スパンで緩やかに変化するものである。

 まとめると、自分軸は未来の目標と、現在どうありたいか、そしてそれらの一貫性を生み出す「好き嫌い」を総称した概念である。そして、この自分軸は、人生の様々な場面で判断の基準となるものである。以下では、自分軸がなぜ重要であるのかを見ていく。

[i] Cialdini, R. B. (2014). なぜ人は動かされるのか 影響力の武器 (第3 ed.). (社会行動研究会, Trans.) 文京区大塚, 東京都: 株式会社誠信書房. [ii] Kahneman, D. (2012). ファスト&スロー(上) (1 ed.). 千代田区: 株式会社早川書房.


4.1ソフトスキルとしての自分軸

 まず、我々は具体的な技能や資格に代表されるハードスキルではなく、ソフトスキルに着目している。社内研修や能力開発、そして若い人自身も目に見えるハードスキルに焦点を当てることは少なくない。一方で、若い段階で身につける意味があるのは、ソフトスキルである。人生100年時代において、その時々で役立つハードスキルを身につけるのは無駄ではないが、より一貫して強みとなるソフトスキルが必要である。例えば、ここで取り上げている自分軸は、どの企業で働くか、何を目標に働き生きていくか、パンデミックや少子高齢化など多くの問題に振り回されずにどう生きていくか、そもそもどのようなハードスキルを身につけるかなど、様々な場面でその効力を発揮する。また、長い人生の中で、一貫して長期的に使えるスキルなのである。このスキルを若い段階で身につけると、長い人生ではその効果が積み重なって、大きな違いを生み出す。

 これは、必要なハードスキルが目まぐるしく変わる世の中では特に重要である。例えば、世の中の情報や知識は指数関数的に増加している[i]。情報や知識が素早く変わる中では、何が必要とされ、何が望ましいとされ、どのようなハードスキルが必要かが極めて短い時間で変化する。そのため、状況に依存するようなハードスキルの効果はすぐになくなってしまうのである。実際に、ソフトスキルは労働市場でますます重要視されるようになっている。LinkedInのGlobal Talent Trendsにおいて、スキルに関する専門家の91%の採用やHRにおいてソフトスキルの重要性の高まりは重要だと答えている[ii]。そして、80%が企業の成功にソフトスキルがますます重要となっていると答えた。1980年から2012年までの労働市場を調べた研究においても、ソフトスキルがますます重要となっていることが確認された[iii]。ソフトスキルの重要性の高まりは、長期的に徐々に起こっているものである。早稲田大学教授の入山[iv]が指摘するように、日本企業はこのような20年を超える長期トレンドを考える必要があり、そのメガトレンドを考えることができていないからこそ、企業が変化できていないのである。

 また、ソフトスキルは「共有資本としての次世代人材」にとってはさらに重要である。次世代人材は各企業が企業内で独占できるリソースではなくなっている。副業や転職が一般的な行動になっている中では、企業内の人材育成は、他の企業の利益にもつながる。これは、無形資産の持つスピルオーバーと呼ばれる特徴がさらに加速している状態である。さらに、次世代人材であれば、未だに企業に属していないため、どの企業に属するリソースとなるかが不確実である。これらの理由から次世代人材を、共有資本としてすべての企業が協力して育てる必要があるのである。では、協力して育てるスキルとはどのようなものが適切であるのだろうか。「共有資本として次世代人材」という考え方を考慮すると、すべての企業に利するスキルを育成すべきである。それが、ソフトスキルであると我々は考えている

[i] Grant, A. (2021). THINK AGAIN The Power of Knowing What You Don't Know. New York: Penguin Random House LLC. [ii] Global Talent Trends(2019) [iii] Deming, D. J. (2017). The Growing Importance of Social Skills in The Labor Market. The Quarterly Journal of Economics, 1593-1640. [iv] 入山章栄. (2019). 世界標準の経営理論. 渋谷区: ダイヤモンド社.


4.2「自分軸」の重要性

 では、重要視されているソフトスキルの中で、なぜ自分軸に着目するのだろうか。それは、重要性が増しているソフトスキルの中でも、本質的であると考えているからである。つまり、様々なスキルや決断の土台となるのである。個人レベルのメリットとしては、キャリアにおける適切な決断、自己肯定間の向上、モチベーションの向上などが挙げられる

 キャリアにおける最適な決断は自分軸で内的な軸を持つことで、キャリア迷子になることを防ぐ。前述の通り、外的な軸では時代の流れと共に一貫性がない。加えて、自らが本当に望むことに基いた決断が行われていないため、キャリアにおける満足につながらない。例えば、給与という外的な軸は代表的な決断軸であるが、実際の個人の満足にはそれほど貢献しないことが知られている[i]。逆に、自分軸に基いたキャリアの選択を行うことで、一貫した軸ができる。それによって、氾濫する情報の中から自らにとって重要なものを引き出すことができる。そして、その情報を基に自らの満足を追求すること、強みの発揮を追求することができる。結果として、自らの目標や強みにマッチした企業を選択することも可能となる。そして、重要なことに、自分軸は簡単に揺るぐものではない。

 さらに、自分軸の明確化は自己肯定感やモチベーションの向上にも寄与する。前述の通り、モチベーションの低さは日本の1つの大きな課題である。そして、自己肯定感の低さも大きな課題である。内閣府の7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査[ii]では、自分を肯定的に捉えている人が45%であり、他国と比較して最も低いと示されている。さらに、うまくいくかわからないことにチャレンジする意欲を持っているのも52%程度であり、他国と比較して最も低かった。

 では、自分軸はこの問題にどのように貢献するのだろうか?まず、自分が何者であるかを知ることは自己肯定感に繋がる。自分が何者であるかを知ることを指す、セルフ・コンセプト・クラリティの研究では、セルフ・コンセプト・クラリティが自己肯定感につながることが繰り返し示されてきた[iii]。加えて、セルフ・コンセプト・クラリティは、個人が感じる仕事の意義を高め、転じて仕事へのモチベーションを高めると示されている[iv]。また、個人が感じる仕事の意義は、エンゲージメント、仕事でのパフォーマンス、組織へのコミットメントや仕事への満足度、ウェルビーイングにとって重要であると示されている。

 自分が何者かが明確であることが重要である一方で、自分が何を達成したいかもモチベーションに大きな影響を及ぼす。目標の設定とモチベーションの関連性は、よく研究されてきた領域であり、その有意性が示されてきた[v]。また、モチベーションに関する大規模な研究では、「前進の感覚」が非常に重要であると示されたが[vi]、前進の感覚を感じるには明確なゴールが設定されていなければいけないことは言うまでもない。ゴールがなければ、何に向かって前進しているのかわからないからである。

 自分軸の明確化・言語化による自己肯定感やモチベーションの向上は結果的に、次世代人材の社会課題への取り組みを阻む無力感、次世代人材の企業の創造性・イノベーションへの貢献を阻む内的軸の欠如を克服する。そして、後の記事で示される通り、企業にとってはイノベーションの実現、生産力の向上、離職率の低下などの形で貢献する。そして、社会には多様性と社会課題の解決、サステイナビリティという形で貢献する。

[i] Ball, R., & Chernova, K. (2008). Absolute Income, Relative Income, and Happiness. Soc Indic Res, 497-529. [ii] https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/tokushu.html [iii] Kawamoto, T. (2020). The moderating role of attachment style on the relationship between self-concept clarity and self-esteem. Personality and Individual Differences, 1-5. [iv] Oh, S., & Roh, S.-C. (2019). A Moderated Mediation Model of Self-Concept Clarity, Transformational Leadership, Perceived Work Meaningfulness, and Work Motivation. Frontiers in Psychology, 1-9. [v] Latham, G. P., & Pinder, C. C. (2005). Work Motivation Theory and Research at the Dawn of the Twenty-First Century. Annual Reviews Psychology, 485-516. [vi] Amabile, T., & Steven, K. (2017). マネジャーの最も大切な仕事 95%の人が見逃す「小さな進捗」の力. (樋口武志, 訳) 渋谷区恵比寿南: 英治出版株式会社.


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