職人と学生の意見を昇華させた新商品開発プロジェクト。エニー生がもたらした社内変化とは?
- OVER20&Company メンバー
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1964年の創業以来、ドアに付属する除き窓「ドアビューアー」に代表される光学レンズや防犯器具、建築金物の製造販売を手掛け続ける株式会社カープ。広角レンズにおける様々な特許技術を保有するも、市場縮小の憂き目にあう。そんな中、自社の技術力を活用した新商品開発プロジェクトを「PROJECT any」と共創プロジェクトとして2024年6月より実施。プロジェクト責任者の坂本聰様、職人の齋藤勝實様にプロジェクト導入の経緯や成果について聞きました。
目次
プロジェクト発足の経緯
市場が縮小する中でも、販路開拓を見据えた攻めの一手
(坂本)私たちは創業以来、ドアビューアー一本で成長してきた会社ですが、市場動向は芳しくありません。どうにか今の技術を活用して新たな販路拡大を模索していましたが、なかなか私達だけでは及ばないと感じていたところに、以前より関係があったプロジェクトエニーがあるじゃないか、と思い相談したことが始まりでした。アイデアを出すとすれば、私たちよりも若い人の方がもっと自由だということで、プロジェクトを依頼するに至りました。
プロジェクトを依頼しておいて申し訳ないですが、当初はドアビューアーを活用して別のものを創ることができるイメージが全くありませんでした。そのため、アイデアがさまざまに出てくるのを聞いて驚くばかりでした。
(齋藤)これ正直に言っていいんですよね?(笑)プロジェクトのことを聞いた時、私はレンズを他のものに代用することはできないと思っていました。ドアビューアーはドアビューアーでしかないので、学生が来ても何もできないと思っていました。
(坂本)プロジェクトが始動した8月ごろは、なかなか進捗がうまれない印象を受けてどうなるか不安に思いながら見守っていましたが、あるタイミングからプロジェクトにかかわる全員の発想が自由になった瞬間があったように感じています。商品に対するより深い理解が必要だと感じたエニー運営の石堂さん、菅谷さんが、工場見学会の提案をしてくださり、エニー生(プロジェクトエニーに所属する高校生・大学生・20代社会人)を招待して実施できたことが良かったのだと思います。より深い商品理解に加え、その後に運営の皆さんが、エニー生の興味領域に焦点を絞ってアイデアを1か月間かけて発散・収斂させることでより自由で興味深いアイデアが爆発しました。
また、ミーティングとは異なる環境の中で、エニー生が職人とコミュニケーションをとれたことは、後々ミーティングの良い雰囲気を作るという面からも非常に効果があったと感じています。
(齋藤)まさかドアビューアーをスマホに取り着けるなんて発想はなかったです。万華鏡のアイデアも興味深かった。調べてみると、日本国内で万華鏡の専門店は5店舗ほどしかないようですし、その着想が私達にはなかったです。

(工場の写真)
プロジェクトがもたらしたメリット
社員・職人同士の未来に向けたコミュニケーションが円滑に
(坂本)プロジェクトが始動してからは、社員が想像以上に新商品アイデアを持っていることに気づけました。このプロジェクトがなければ、ドアビューアーの活用方法について話さないままだったと思います。エニー生に触発されるように、プロジェクトが進むに連れて職人の発言量が増えるのを感じ、エニー生・社員・職人全員に良い効果があったと感じています。
(齋藤)ドアビューアーを付ける建物が年々減少しているため、どうしようかと思っていましたが、職人や社員同士で「じゃあどうするのか」を話したことはありませんでした。プロジェクトが始まった時も、最初はなぜ来るのかな?と思っていました。ただエニー生もいろいろ考えてくださり、試作品を作り本当に形にするところまで実行しているところを見て感心しました。私自身も、日常から町中にあるカメラやレンズに注目するようになり、エニー生がいないときでも職人同士で話す機会も増えていることを実感しています。
学生の可能性・アイデアを引き出す秘訣
自分の常識を脇に置き、心理的安全性を高める
(坂本)コミュニケーションをとる中で、自分がこうだと思うことを脇に置くことを意識しました。エニー生に比べると、どうしても私たちは社会人経験が長いため、私たちなりの常識を押し付けてしまいがちですが、エニー生の自由な発想を取り入れたいのであれば「こうあるべき」を言わずに彼らの話にさらにアイデアを加えるコミュニケーションをする必要があります。実際にこれを意識したことが、エニー生の持つ強みの発揮に繋がり、試作品完成にまで至ることができた理由の一つだと思います。

カープ社とのプロジェクトは、「新商品開発プロジェクト(2024年6月~10月)」と「試作品製作プロジェクト(2024年12月~2025年3月)」まで完了しています(記事執筆の2025年4月時点)。プロジェクトごとに設けられる最終報告会(役員プレゼン)をパスすることで、次のプロジェクトが始動します(クライアントの求めるレベルに満たないアウトプットの場合は、プロジェクトは解散)。2025年5月からは、試作品の詳細デザインや詳細な市場調査、マーケティング戦略などを策定する「販売戦略プロジェクト」が始動します。
エニー生の特徴
好奇心と行動力を兼ね備えた存在
プロジェクトに参画していただいたエニー生は、何かを始める際にとても重要な「好奇心」と「行動力」を持っています。今回のプロジェクトでは、万華鏡やクリップレンズの他にも多くのアイデアが生まれましたが、先述の通り、自身の興味領域と紐づけたものや、実際に万華鏡の専門店にインタビューを実施したりと、その発想力と行動力をいかんなく発揮いただきました。2025年5月からもプロジェクトエニーとの継続プロジェクトが始まり、新しいエニー生が参画されると思いますが、彼らのそうした部分にも非常に期待しています。

(プロジェクトメンバーが製作した設計イメージ)

(実際の試作品)
ご担当者様の声
私たちのように、一つの製品を長く製造してきた老舗メーカーは日本には数多くあると思いますが、自社の社員だけではドアビューアーの技術を転用して新商品開発の可能性を模索できなかったように思います。今振り返っても、私達だけでは絶対にできないプロジェクトであったため、既存製品の強みを生かして現代の価値にあった商品を企画したい企業ニーズは高いと思います。

(左から順に齋藤勝實様、坂本聰様)
株式会社カープ
取締役 坂本聰様
大学卒業後、ITベンダーでのサラリーマン生活を経て教育サービスとITサービスの「有限会社考学舎」を起業。エンドユーザーに扱いやすいシステムの開発、聴く力、思考力の育成には定評のある企業に育てた。2023年先代の急逝に伴い、株式会社カープの実質的経営者に就任。若い世代の社員とエニー生の力を借りて、第2創業を進めている。
会社情報

株式会社カープ
設立 | 1964年 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員 | 10名 |
事業内容 | ・光学機器 ・光学レンズ ・防犯器具 ・建築金物の製造販売 |