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AIの台頭で新卒の就活は難しくなるのか。これからは"アイドル力"が最強の武器になる。Z世代が本音で語った、僕らの未来生存戦略

2025年8月9日(土)、オンライン上に集ったZ世代の若者たち。テーマは、現代を生きる私たちにとって避けては通れない「AIの台頭によって新卒採用は厳しくなるか?」。

現役大学生から若手社会人まで、多様なバックグラウンドを持つ登壇者たち。彼らはAIの未来に「ワクワクする」と口を揃える一方で、その進化が自らのキャリアに落とす影に、一抹の不安を隠せない。期待と不安が交錯するリアルな議論の模様を、会話形式でお届けします。

※ディスカッションの様子を可能な限りそのまま公開しているため、事実と異なる発言がある場合がございますが、エニー生のリアルなディスカッションとしてお楽しみください

【参加者】

  • Pさん: 北海道大学を卒業後、アメリカの大学院に在籍。「AI時代の到来にワクワクしている;ハイ」、「AIの台頭により、就職難が近づいていると思う;ハイ」

  • Yさん: 一橋大学院在籍。「AI時代の到来にワクワクしている;ハイ」、「AIの台頭により、就職難が近づいていると思う;イイエ」

  • Iさん: 創価大学在籍。「AI時代の到来にワクワクしている;ハイ」、「AIの台頭により、就職難が近づいていると思う;イイエ」

  • Sさん: 慶應義塾大学を卒業後、人材業界のスタートアップ企業で働く社会人1年目。「AI時代の到来にワクワクしている;ハイ」、「AIの台頭により、就職難が近づいていると思う;ハイ」

  • モデレーター: 一橋大学卒業。PROJECT any運営。本イベントの進行役。「AI時代の到来にワクワクしている;どちらともいえない」、「AIの台頭により、就職難が近づいていると思う;ハイ」



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テーマ1:AIの台頭と、新卒の価値

モデレーター: 皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。早速ですが、事前アンケートでは皆さん『AI時代の到来にワクワクしている』と回答されました。一方で、『AIによって新卒採用は難しくなるか?』という問いには意見が割れました。このあたりから、まずはお話を聞かせていただけますか?


S: 僕は社会人という立場から見て、採用は厳しくなると思います。うちの社長もよく言ってるんですが、AIで業務効率化が進むと、単純に人がいらなくなる。今まで10人必要だった仕事がAIアシスタント込みで3人くらいで回せるようになったら、企業としてはコストをかけてまで残りの7人を雇う必要がない。そうなると、必然的に新卒の採用枠自体が減っていくんじゃないかなって。

P: 私も厳しくなると思います。Sさんのお話は、いわゆる定型業務だと思うんですけど、その流れは専門職にも絶対来ると思っています。例えば、医師や公認会計士の世界。AIの方が医療ミスが少ないっていうデータもあるくらいなので、これまで安泰だと思われていた仕事ほど、AIに取って代わられるリスクは高いんじゃないかな。


モデレーター:なるほど、採用のパイ自体が減るという構造的な問題と、専門職のあり方が変わるという質的な問題ですね。逆に、YさんとIさんは、必ずしも悲観的ではない、と。


Y: AIが発展したら、AIにできない領域を人間が担えるかが基準になると思うんですけど、その観点から行くと、僕はむしろ新卒にとってはチャンスじゃないかとさえ思っています。AIは、過去のデータを学習して最適解を出す仕組みなので、これまでの社会で評価されてきた経験や経歴っていう"過去の遺産"の価値が相対的に下がると思うんです。そうなると、AIには学習できない、前例のない新しい発想を持つ若者の価値が上がるんじゃないかなって。

I: 私もYさんの意見に近いです。特に、業務にAIを導入していく初期段階では、私たちみたいに物心ついた頃からデジタルに触れている世代の方が、AIを使いこなすのは早いはず。新しいツールをどう活用するか、そのポテンシャルを見出す力は、むしろ若手にアドバンテージがあると思います。


モデレーター:なるほど。どちらの意見も説得力がありますね。一方で、キャリア採用組の持つ“過去の遺産”(経験値)は、AIのアウトプットに対する目利き力として重要な役割を果たすと考えると、近い将来では、新卒採用組以上に価値を発揮するとは考えられませんか?


Y:勘に近いところの話をしているのだと思いますが、勘はその人が言語化できていない経験から来るものだと考えると、そこのデータをAIが学習できる前提に立てば、その目利き力は代替できると思います。

S:確かに(笑)。あとは意思決定プロセスがしっかりとデータとして蓄積されているかどうかですね。不動産業界は未だにFAXを活用している会社も多いので、変化を嫌う日本においてどれだけそれらを推進できるかによって、その未来がいつ来るのかも変化しそう。

P:新卒の方には、AIで代替できないくらいの感性はありますか?具体的にはどんなものなんだろう。若い人がもうAIを通して育ってしまっているからこそ、自分の意見がなくなってきている時代だと思うんですよね。もうすでにSNSとかの台頭によって、インプット・アウトプットをしない世代なので。拍車をかけるように自分で考えることをやめて、全部chat GPTに聞こうってなってしまってるとしたら、企業から「いいな」って思われる価値は生まれるんでしょうか。

Y:最近僕が関心があるのは、AIの教師データ、AIが何をデータベースにしているか

・何を食わしたAIなのかという部分がすごく大事で。よく言われるのは、Western, Educated, Industrialized, RicP, and Democraticの頭文字をとって「WEIRD」という考え方で、研究対象として偏りがあるということ。要は、西洋のデータがほとんどだよねって話です。逆を言うと、Indigenous(先住民)とか、より周縁化された個人のデータを大量に食わせることはできないので、一つの価値基準に標準化されていくみたいな話があると思うんです。そういう意味で言うと、今食ってるデータのほとんどは、前の世代とか上の世代が作ってきたデータセットなので、もし採用担当者がそういうことを考えたとすれば、大学生や次世代が持つ外側の意見は有利になる一つにかもしれないと思います。

S:確かにそれは言えそうですね。たださっきも言った通り、実際に仕事をする中で感じるのですが、全体的な求人数はどうしても減ってくるようには思います。大学生に求められる素養が何かを考えて行動することが大切そうですね。

Y:  確かにAIによって働き口は減少すると思いますが、『責任の所在』を明確にする必要がある仕事は残りそうですよね。AIは責任を取れないので、結局は人間が判断を下さないといけない。こういう領域にこそ、人間の仕事が残っていくんだと思います。

P:私も現在就職活動中ですが、AIにとってかわられづらい業種・職種を考えながらエントリーをしています。


テーマ2:AIと共存するための「生存戦略」

モデレーター: 面白いですね。AIが得意なことと苦手なことを見極めて、人間の価値を発揮できる領域を見つける、と。では、これからの新卒学生は、具体的にどんな能力を身につけていくべきなんでしょうか?

戦略① アブダクション(仮説的推論)

Y:AIと人を考える時によく出される「クリエイティビティ」という言葉に関して、何を指して言っているのか分からないことがよくあります。知識の結合なのか、分解なのか。じゃあ、「AIにできないクリエイティビティ」と「できるクリエイティビティ」があった時に、得意とすることは、帰納と演繹で、複数データから一つのパターンを見出すことは得意だと言えそうです。ただ第3の推論法と呼ばれる「アブダクション」、ある種の飛躍を伴って帰納と演繹を行き来するみたいなことは、現時点のAIには難しいのではないかと思っています。

S:モノが落ちていく共通性から、重力というこれまでにない概念を考える力みたいなことですね


戦略② 「オタク」であれ。専門性を極めるか、領域を拡張するか

I:今まで手を出せなかったマイノリティな分野に脚光が当たる時代が来そうな気がしています。例えば、様々なアカデミックフィールドを横断した考え方とかは、今まで掛け合わせることが難しかったと思うんですけど。例えば、じゃあ経済学と心理学を合成してください、みたいなことを打ったら、新しい学問が出てきて。メインストリームから支流に突き進んでいく人も増えていくのかなという感覚があります。

P: AIには真似できないこと、で言うと、五感を使うような繊細なスキルは価値を持つと思います。例えば、ウイスキーのテイスティングとか。香りや味わいの複雑なニュアンスを言語化して評価する、みたいな仕事は人間にしかできないですよね。

S:確かに感覚的な部分に関しては、今今は数値化されづらいとされるところですが、近年に入って、徐々に数値化する取り組みが始まっているので、もしかしたらそれもAIによってより汎用化されるのかもしれませんね。

Y:二人の意見を聞きながら、これからのキャリアは『超スペシャリストか、超ジェネラリストか』の両極端に振れる気がします。Pさんが言ったような、一つの分野を異常なまでに掘り下げる"オタク"的なスペシャリストは強い。一方で、中途半端な知識はAIに代替されるので、生き残れないんだろうと。


モデレーター: 超ジェネラリストっていうのは、どういうことですか?

Y: AIの学習データに含まれていない、あるいはまだ学習が進んでいないマイナーな領域を、広く浅くではなく、広く深く知っている人材です。例えば、経済学と心理学と人類学を横断して、新しいビジネスモデルを考える、みたいな。 あるいは、アイヌ文化にめちゃくちゃ詳しいとか、社会的に光が当たりにくい人たちのリアルな声を知っているとか。AIがまだ知らない一次情報を持っていることが、とんでもない価値になる時代が来ると思います。


戦略③ アイドル力。「応援」を力に。

モデレーター:なるほど。では、スキルや知識以外の部分、いわゆる人間性の部分ではどうでしょう?

S: 結局、『こいつと一緒に仕事したい』って思われるかどうかが全てな気がしますね。僕の会社もそうですけど、スキルだけならAIでいいじゃんって話になりがちです。でも、チームの雰囲気を良くしてくれるとか、この人がいると頑張れるとか、そういう人間的な魅力はAIにはない。それこそ、自己プロデュース力みたいなものが問われる時代になると思います。

Y: まさに、個人がアイドル化していくんだと思います。みんながアイドルを応援するのって、歌が上手いから、ダンスが上手いから、だけじゃないですよね。その子の背景にあるストーリーとか、成長していく過程とか、キャラクターそのものをひっくるめて応援している。就活も同じで、『私はこういう経験をしてきて、こういう価値観を持っている人間です』という、自分だけの物語を語れる人が強い。AIは偽物のストーリーは作れても、本物の熱量は生み出せないので。

I:確かにそうかもしれないですね。ただ、みんながアイドルみたいにならなきゃいけないって思うと、如何に人に応援してもらえる存在になるみたいなところが先行しすぎて、自分との乖離に悩む瞬間も増えそうですね。

P:自分との乖離がある、で言うと、もうすで就職活動がそうじゃないですか。そんな応援されるようなストーリーなんてあまりないじゃないですか、自分の人生に。一貫性はあるのかもしれないけど、それは0.5ぐらいのものを1.5くらいに見せる作業が就活だと私は思ってるので、気にしなくていいのかなと思います。

モデレーター:応援される力で言うと、「飲み会戦士」の復活もあり得そうですね。

S:確かに、結局決裁権者や意思決定者は商品力はもちろんですが、担当者の愛嬌や人として付き合いたいかをそういう機会で見ている節はありますよね。


モデレーター:ちなみに皆さんは、AIを応援したり感情移入することはできますか?

S:今のところ、出来ない。

Y:これからのAI推進にすごい示唆ある面白い事例があります。ボーカロイドってあるじゃないですか。今でこそ合成音声はよく聞くようになりましたけど、ボーカロイドの開発って実は2000年から始まってて、初音ミクは2007年に発売されているんですよ。最初のうちは、プロから「所詮偽物の声だよね」とか、本物の人間じゃないから意味ないって言われてたんですけど、今や日本のメインストリーム音楽のトップ層においても、ボカロ出身は多く存在しています。米津玄師とかYOASOBIとか。ボカロ曲も、今2億回ぐらい再生されてる事例もあることを考えると、応援できるわけないじゃんって今思っていても、次の世代はもう人間とAIってそんなに違わなくて、ただ電子的なプログラムでできてるか、生物的なプログラムでできてるかぐらいの違いしかないんじゃないかって思っています。


テーマ3:AIは僕らの「幸福」をデザインできるのか?

モデレーター: 話は尽きませんが、最後に未来の話を。皆さんはAIの到来にワクワクしているとのことでしたが、それはどんな未来を想像しているからなんでしょうか?

I: 私は単純に、面倒なことが減って、もっと楽に生きられるようになるならいいなって思っています。

P:私はよく2回目の人生があった時にどうするかという視点で振り返りをするのですが、人生って遠回りが多いじゃないですか(笑)。もっと効率的なルートをAIが示してくれるなら、それはそれで快適かなって思います

モデレーター: 僕は逆に、その効率化がちょっと怖くもあります。創造性って、無駄や余白から生まれるものだと思うので、全部が最適化された世界って、あんまりワクワクしないかなって…

Y: そこが面白いところで、僕はそもそも人間の自由意志って、ある種の幻想だと思っているんです。結局、僕らは社会や環境、遺伝子とか、いろんなものに規定されて生きている。どうせ何かに操られるなら、中途半端な人間の判断より、圧倒的に優れたAIに人生を最適化してもらった方が、結果的に幸福なんじゃないかな、って思ったりもします。

モデレーター: それは面白い考え方ですね。一方で人間って『自分で選んでいる』っていう感覚が、幸福感に繋がりませんか?

Y: 確かにそうですね。でも、AIはその『自分で選んでいる感』すら、僕らに錯覚させてくれるかもしれないですよ。浮気してるけど、パートナーにはバレずに円満な関係を演じ続ける、みたいな(笑)。AIは、僕らにとって都合のいい現実を見せてくれる、最高のパートナーになる可能性もあります。

P: うわー、深い…。もはやSFの世界ですね。AIを個人の視点で考えるのか、マクロの視点で考えるのかでAIが進んだ未来についての議論は大きく変わるかもしれませんね。

I:確かにY君の視点は、個人レベルの視点で見ると良い未来だと感じる一方で、マクロ視点で見た時に、AIが社会を操る、ヒトに選択肢を与えてるようで、実は全部を操ってるって考えてしまうと、何のためにヒトが存在しているのか、AIが核戦争を誘発させると人類は滅ぶかもしれないのに、、、って考えるとうつ病の方とかも増えるかもしれないですね。




余談;AI時代の大学の価値について

AI時代の大学の価値について(スぺリストとゼネラリストの議論から派生して)

モデレーター: 大学の価値はどうなるんでしょうか

P: 研究機関でどうなるか不安ですね。

モデレーター: いよいよ大学に行く意味みたいなところも、考えてしまいますね

S: 大学行く意味、あるんですかね?

I: 大学で教えていることはAIから学べるので。

Y: 確かに講義式であればそうですよね。ただ個人的には、研究を始めて、めちゃくちゃ成長しているなと感じます。研究をして、論文を書いて初めて身についたものとかも結構あるなと感じています。

モデレーター:今の大学って確かに、先生も研究で忙しいから、おそらく講義内容も片手間でつくった資料とかを出してるところもあるので、知識の伝達という意味では、価値は薄れていきそうですね。ただ、少人数で議論を重ねるゼミは重要な気がします。専門分野や領域を横断したメンバーでディスカッションすることで生まれる新しい視点であったり、熱の伝播みたいなところ。AIからは今のところ熱は感じないので、仲間づくり的なところとかはすごい重要なのかもしれないですね。

P:あとchat GPTや資本主義を離れた学問は非常に重要だと考えています。例えば、私はアメリカ文学を学んでいたのですが、研究手法にはアメリカ式と日本式があることを知りませんでした。日本だけなんですよ、昔の本ばっかり読んでるのは。アメリカはどんどん前に進んでるっていう学問的な違いもあって。そういうような、すごいニッチな世界になると、もうAIは分からないことだと思うんです。私がこの手法を日本の先生から聞いたように。だから、ゼミで資本主義社会をちょっと離れた、文化的資本みたいなところを学べる所が大学の良さだったかなって振り返って思います。

コーネル大学で日本語教師をしているのですが、その時に、コーネル大学の先生に言われたことは、学生はAIで勝手に日本語を学ぶので、自分の経験則とか、実際に会ったストーリーを話してください、日本文化はこうなんだっていう、自分の意見を伝えるようにしてくださいってことを言われたんです。そこはやはりAIで学べない領域。個人的なサブジェクティブなものを伝えるっていうとこが、教授の方でも大事だなって感じました。


 
 
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