「国技」の枠を超えたエンターテイメント。Z世代が語る、相撲の奥深き世界
- OVER20&Company メンバー

- 9月4日
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2025年8月22日(月)、多種多様な「好き」を持つ若者が集うオンラインイベント「オタク会議」が開催された。今回プレゼンターとして登壇したのは、3名のうちの一人、大の相撲ファンである大学2年生の湯瀬太陽さんのプレゼンテーションをここではご紹介します。湯瀬さんは、伝統文化というイメージの強い相撲の魅力を、独自の視点で熱く語りました。
※ディスカッションの様子を可能な限りそのまま公開しているため、事実と異なる発言がある場合がございますが、エニー生のリアルなディスカッションとしてお楽しみください
プレゼンテーター
湯瀬太陽さん
上智大学2年生。幼少期から祖父とテレビで相撲を観戦することで相撲に興味を持つ。20場所続いた照ノ富士の一人横綱時代、横綱は休場と復活を繰り返し大関陣は徐々に数を減らしていくというスター不在の時代の中で頭角を現す若隆景に惹かれ、相撲の深みにはまっていく。
「1500年以上の歴史を持つ、日本の伝統文化」。そんな教科書的な説明から始まったプレゼンテーションは、次第に「階級制度」「技」「力士個人の物語」へと深化していく。彼の言葉から見えてきたのは、単なるスポーツ観戦に留まらない、相撲という総合エンターテイメントの奥深い世界だった。
相撲の世界への招待状:「本場所」と「巡業」という2つの顔
皆さん、相撲と聞いて何を思い浮かべますか?実は、相撲には大きく分けて『本場所』と『巡業』という2つの楽しみ方があるんです。多くの方がイメージするテレビ中継は、年に6回開催される公式戦「本場所」です。横綱や大関といった力士たちの番付(ランキング)が決まる真剣勝負の場で、15日間にわたって熱戦が繰り広げられています。
一方で、本場所のない月に行われるのが「巡業」。これは地方都市を巡り、相撲の魅力を広めるための、いわば「ファン感謝祭」のようなイベントだとイメージしてください。握手やサインにも応じてくれますし、本場所では見られない力士のリラックスした表情が見られます。
真剣勝負の緊張感と、ファンとの交流。この二つの顔を知ることで、相撲の魅力は何倍にもなるんです。

若隆景という「推し」の物語。挫折と栄光がファンを惹きつける
僕の推しは、福島県出身の若隆景関です。彼に惹かれたきっかけは、2022年3月場所での初優勝。新関脇(※上から4番目の階級)として臨んだ場所で優勝するという、86年ぶりの快挙を成し遂げたんです。その時の優勝決定戦が本当に素晴らしくて…それ以来、彼の相撲に夢中です。
若隆景関の魅力は、その卓越した技術にあって、特に「おっつけ」と呼ばれる、相手の腕を封じ込める技を得意技にしており、自分よりはるかに大きな相手を投げ飛ばす姿は圧巻です。
僕が若隆景にさらに惹きつけらたのは、彼の持つ「物語」です。実は若隆景は優勝した後、大怪我で番付を大きく落としたことがあります。関脇というトップクラスから、薄給の幕下まで落ちてしまったんです。でもそこから腐らずに這い上がり、再び関脇の座に戻ってきたときには本当に感動しました。怪我を乗り越えて復活した物語に、心を鷲掴みにされました。
あと、もう1個推している理由があって、それがファンサービスなんです。実は、若隆景はファンへの対応がめちゃくちゃ塩対応なんです(笑)。写真を頼んでも、ほとんど笑ってくれない。でも、そのぶっきらぼうな感じが逆に良くて。『イケメンだから』という理由だけで寄ってくるファンが少なくて、本当に彼の相撲が好きな人だけが残る。最高のファン層が形成されているんです。
観戦が10倍楽しくなる、相撲「沼」への入り口
最後に、相撲にあまり関心がない人にまずお勧めしたい3つの作品を紹介します。
漫画『バチバチ』シリーズ: リアルな相撲の世界と、力士たちの熱い人間ドラマが描かれる。相撲の厳しさと面白さを知るには最適の一冊。 [09:41]
漫画『火ノ丸相撲』: 週刊少年ジャンプで連載されていた王道のスポーツ漫画。小柄な主人公が、体格差をものともせず頂点を目指す姿は、相撲を知らない人でも熱くなれる。 [10:49]
ドラマ『サンクチュアリ -聖域-』: Netflixで配信され話題となった作品。相撲界の光と影をリアルに描き、多くの人に相撲の魅力を再認識させた。
これらの作品で、ルールや力士の背景、相撲界の文化を知ってから実際の取組を見ると、何が起きているのかが理解できて、面白さが格段に上がります。自分なりの『脳内実況』ができるようになると、もう沼から抜け出せませんよ(笑)」
湯瀬さんのプレゼンテーションは、相撲というテーマを通して、何かを「好き」になることの豊かさを教えてくれた。それは、対象の歴史やルールを学び、登場人物の物語に共感し、自分なりの視点でその魅力を他者に伝えるという、知的好奇心と愛情に満ちた営みだ。
彼の熱のこもった語りを聞き終えた今、多くの参加者が、これまで遠い存在だった「相撲」という世界への扉を開いてみたいと感じたに違いない。


