top of page

【any STUDY】世界情勢に見る「人的資本」と「any」

更新日:2022年12月15日

【any STUDY】第一弾は、「世界情勢に見る「人的資本」と「any」」をテーマに執筆します。


人的資本投資の開示が注目されている。もちろん、人的資本への投資とその開示は間違いなく重要である。しかし、なぜ重要であるかを理解しないと、大事な部分が見落とされる。その場合、人的資本はただのバズワードとなり、人的資本投資の開示は企業のリップサービスとして捉えられてしまう。そのような陳腐化を防ぐには、なぜ人的資本が重要であるのか、そして人的資本投資の開示の重要なポイントを知る必要がある。本記事では、以下のような情報を提供する。

1. 人的資本投資の開示の歴史と重要性

2. 人的資本の重要性の背景にある2つのトレンド

3. 人的資本の開示で企業が取るべき行動

4. anyと人的資本の開示


【人的資本投資の開示の歴史と重要性】

人的資本投資の重要性が注目され、その開示への取り組みも推進されている。2018年12月に人的資本の国際的ガイドライン「ISO30414」が発表されました。米国では、2020年8月には米国証券取引委員会が上場企業に対して人的資本の開示を義務化。それに追随する形で、日本では2020年9月に「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書〜人材版伊藤レポート〜」が発表さ。2022年には人的資本に関する政府指針が掲載され、企業の人的資本投資への関心が向上した。2023年には上場企業を中心に有価証券報告書に人的資本の情報の記載が義務付けられる予定です。

その結果、企業にとっても人的資本の開示は重要な関心事となっている。人的資本の開示が企業の業績にとって重要だからである。例えば、人的資本の活用は株価に好影響を与。 また、働きやすさに注目した投資信託「働きやすい企業戦略」の運用においては、働きやすさの指標が好スコアの銘柄約250に投資するとしている事例も。




【人的資本の重要性の背景にある2つのトレンド】

人的資本投資の重要性が高まる背景には、2つの強化しあうトレンドがある。1つが無形資産の重要性の高まりである。「企業価値の決定要因が1990年代以降に無形資産へとシフトし、(中略)ど真ん中にあるのが人材と伊藤邦雄氏は述べている。実際に、2015年から「S&P500」の市場価値の構成要素において、無形資産の割合が8割を超えている。日本においては、企業の情報開示において、非財務KPIが占める割合さらに人的KPIが占める割合も増加傾向に。このように、無形資産の重要性の高まりは、人的資本投資を促す要因の1つとなっている。

無形資産は目に見えないからこそ、重要性が高まっている。様々な目的に適応できるのが無形資産の特徴で。例えば、形がある設備と比較して、形がないモチベーションは様々な目的に対して利用することができるのである。そのため、無形資産に集中することで、様々な目に見える目的に適応できる資産を構築することができるのである。これは無形資産が目に見えないからこその性質である。

人的資本投資の重要性が高まる背景にあるもう1つのトレンドは、無形資産の可視化が行えるようになっていることである。例えば、オンラインツール「Wevox」は、挑戦心などの従業員の心理的状態をエンゲージメントとしてスコア化することが可能である。大日本印刷(DNP)はこれを導入、これまで可視化ができなかったような無形資産の可視化を進めている。これは、無形資産の重要性が故に進んでいるトレンドであると同時に、無形資産の重要性を促す要因でもある。例えば、ダイバーシティに関するデータの収集が可能となったため、ダイバーシティに関するデータを開示しないこと自体が問題に無関心であると示すことになるという見解も。そのため、無形資産の重要性の向上と、可視化の可能性は、互いに強化しあいながら人的資本投資の開示を促している。


【人的資本の開示で企業が取るべき行動】

さて、人的資本投資の開示が必要とされる時代で、企業はどのような行動を取ればいいのだろうか。人的資本の開示においては、いくつかのポイントが強調されている。非財務情報可視化研究会が公表している、人的資本可視化において、有効な人的資本の開示には、企業戦略との整合性があること、独自性があること、他社との比較可能性があることを重要としている。ただ、既定の開示標準に従って行うだけでは不十分なのである。企業戦略との関係性を示すことで人的資本投資の必然性が示される。そして、独自性を確保することで差別化を行い、同時に比較可能性で他の企業とどこが同じで、どこが異なるのかを示すことができる。


【anyと人的資本の開示】

anyへの投資はこの3つの条件を満たすものである。まず、anyはイノベーションを起こそうとする企業の戦略と深くかかわっている。産業組織論から、企業の外部環境の重要性を提唱するSCPモデルが発展した20世紀前半から、1981年にマイケル・ポーターが経営学に産業組織論の知見を持ち込、さらに現在に至るまで企業がどのような外部環境に接しているかが重要視されてきた。それは、労働市場も例外ではない。その意味において、どれだけイノベーティブな人材が労働市場にいるかは、イノベーションを起こそうとしている企業にとっては重要である。そして、今日本ではイノベーションを通じた社会課題の解決が必要とされて、経済を牽引するのもイノベーションとも考えられて。そのため、多くの企業にとってイノベーティブな人材が多い労働市場に面していることが重要であり、日本の労働市場によりイノベーティブな人材を増やすことは企業戦略にとって重要である。anyは各個人の「自分軸」を明確にし、画一化された軸ではなく個々で異なる軸を持つことを支援することで、多様性と自律的行動を促し、結果的にイノベーションに寄与する。つまり、anyはイノベーティブな人材を産出するのである。

また、anyは独自性において人的資本投資の開示方針にとって有益である。まず、anyは人的資本を、社会全体が共有している、共有資本として考えている。そのため、企業は企業内の人材ではなく、企業の属していないプレ社会人の育成に対して投資をすることとなる。これが、他の人的資本投資と大きく異なる点である。また、異なるだけではない。無形資産の性質と現在の労働のトレンドを考慮すると、合理性もある。無形資産の1つの特徴としてスピルオーバー(波及効果)が。前述の通り無形資産は目に見えないからこそ、様々な目に見える目的に寄与する。スピルオーバーはそれをさらに拡張し、無形資産への投資は、他の主体の利益ともなることを説明する。例えば、人的資本への投資で、よりモチベーションの高い個人を育成できたとして、そのモチベーションの高い個人から利するのは育成を行った企業ではなく、その個人が関わるあらゆる企業である。それが、協力先でもあるかもしれないし、その個人が次に属する企業かもしれない。いずれにせよ、投資することと、その投資結果の利益を独占することが単純にイコールであるという論理は、無形資産には適応されない。これは、キャリアが多様であり、個人が一生の中で様々な企業と関わるではさらに加速する性質である。以上より、もとより無形資産の効果は独占できるものではない。そのため、企業内で人的資本への投資を行うのも有益であるが、anyが行うような企業に密着していないソフトスキルの育成はむしろ、企業慣習や企業文化に触れ、染まっていない段階で行うのが重要なのである。

比較可能性においてもanyは人的資本投資の開示方針にとって有益である。例えば、「ISO30414」との比較を行うと、以下の項目にanyが対応している。つまり、行っている事や対象は独自性がある一方で、最終的に貢献するような項目は従来の人的資本の開示項目と対応関係があり、他者と比較が可能なのである。

  • 従業員のコンピテンシー率

  • リーダーシップ育成

  • 従業員エンゲージメント

  • 離職率・定着率

  • 採用・離職コスト

  • 後継者有効率・カバー率・準備率

  • 退職の理由

  • 従業員の質

  • ダイバーシティ


以下参考文献



bottom of page